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物件の引渡し時のリスクマネジメント -医療機械・内装に対する補償-

保険商品開業時のリスクマネジメント 2024-01-23

クリニックの内装や機器類などが、火災や自然災害などで損害を負う頻度は、さほど多くはありません。しかし、万が一損害が発生すると、経済的なダメージが大きくなり、自己資金のみでは対処が困難になることがあります。

開業の際は、物件が引渡されるまでに医療機器や内装などが損害を負ったときの備えを準備しておくことが大切です。今回は、物件の引渡しまでに検討すべき保険の種類や、補償内容を決める際のポイントをお伝えします。

医療機器や内装などの損害は「火災保険」で備える

医療機器や内装などのモノに対する損害に備えられる保険は、主に「火災保険」です。

火災保険という名称ではあるものの、落雷や破裂・爆発、風災、ひょう災、漏水、水災、破損・汚損、盗難などによる損害も補償されます。

火災保険で補償されるケースの例は、以下の通りです。

  • 火災で建物や医療機器が燃えてしまった
  • 台風でクリニックの窓ガラスが割れた
  • 洪水でクリニックが床上浸水し、医療機器が使えなくなった

※実際の補償範囲は契約内容によって異なります

火災保険の特徴は、実際の損害額に対して保険金が支払われる点です。

具体的には「施設に損害が生じた時点での建物の評価額(保険価額)」や「財産などの動産で生じた実損額」を限度に、保険金が支払われる仕組みです。

なお、テナント物件を借りて開業するケースと、建物を購入して開業するケースでは、火災保険での備え方が異なります。

以降では、クリニックを開業する医師の9割以上が選択するテナント開業時の備え方をご紹介します。

テナント開業の場合は賃貸契約を確認する

テナント開業の場合、内装工事が終わって物件が医師に引渡され、その後1か月以内に医療機器などが搬入されます。

物件が引渡されたときから、医師には所有物に対する責任が発生します。その時点ではすでに、内装や医療機器の損害が保険で補償されている状態でなければなりません。

そこでテナント物件に入居する場合は、まず賃貸借契約の内容を確認します。契約によっては、指定の火災保険に強制加入となることがあるためです。

賃貸借契約で火災保険の加入が強制されるケースがあるのは、借主に「借家人賠償責任保険(特約)」に加入してもらうためです。

借家人賠償責任保険に加入すると、借りていた戸室が偶然に発生した事故で損害を負い、オーナーに対して法律上の損害賠償責任を負ったときに保険金が支払われます。

賃貸借契約で火災保険の加入が強制されていない場合は、別途火災保険に加入して損害に備えます。

火災保険に強制加入の場合は補償が十分であるかを確認する

賃貸契約で指定される火災保険に加入する場合は、内装費用や医療機器の購入価格、設備・什器の価格、などから考えて補償額が十分であるかを確認することが重要です。

補償額が不足していると、内装や設備・什器などが損害を負ったときに、十分な保険金が支払われず、持ち出しが必要となる恐れがあるためです。

補償が不足しているようであれば、個別に火災保険に加入します。

強制加入でない場合は医師自身で火災保険に加入する

賃貸借契約で加入が強制される火災保険がない場合、事業用の火災保険などを検討します。事業用の火災保険は、家財(家具・家電・衣類等)に加え、設備や什器、機器、器具なども補償の対象に含められるためです。

建物部分の損害は、オーナーが加入する火災保険でカバーされるため、医師が個別に加入する必要はありません。ただし、オーナーからの損害賠償請求に備えて「借家人賠償責任保険(特約)」はセットしておいた方が良いでしょう。

また、クリニックが火災や自然災害などで休業せざるを得なくなったときに備えて「休業損害補償」を付けておくと安心です。

クリニックが当面のあいだ休業することになると、収入が得られないなかで、従業員の給与や借入金の返済分、水道光熱費などの固定費を支払っていかなければなりません。

休業損害補償がセットされていれば、クリニックが休業することになったときは保険金で固定費の支払いをカバーできます。

補償を検討する際の注意点

医療機器をリースにする場合、医師が個別に保険に加入しなくても良いケースがほとんどです。基本的には、リース会社が加入する動産総合保険で補償されるためです。

また、火災保険に加入する際は、過不足がないように補償額を設定する必要があります。

先述の通り、火災保険では実際の損害額が支払われるため、補償額を高くしても保険金の受取額が増えるわけではありません。補償額を過大に設定すると、余分な保険料を支払ってしまうことになります。

クリニックを開業するのであれば、破損・汚損補償が付いているかを確認する必要性が高いといえます。クリニックでは「医療機器の移動中にドアを破損した」などの破損・汚損事故が多い傾向にあるためです。

補償を決める際は保険会社や保険代理店のサポートが不可欠

クリニックを開業する際は、保険金額や補償範囲、特約などを適切に設定した火災保険に加入することが重要です。

また、建物を購入してクリニックを開業する場合、内装部分は建物の補償額にも含めるなど、テナント開業とは補償の決め方が異なります。

とはいえ、普段の業務や開業に向けた準備などで多忙を極める医師が、自分自身の状況に合った火災保険を選ぶのは困難でしょう。

クリニックを開業する際は、商品や補償内容の選択を適切にサポートできる保険会社や保険代理店の存在が不可欠と言っても過言ではありません。

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