子どもの教育費はいくらかかるのか?-平均額を解説-
子どもの教育費は、多くの家庭にとって大きな負担となります。幼稚園から大学までの教育費は、総額で2,000万円以上になるといわれることもあります。
とくに医学部や歯学部に進学する場合は、学費だけで3,000万円以上かかるケースも珍しくありません。
今回は、幼稚園から大学までの平均的な教育費を解説します。
子どもの教育費はどれくらいかかるのか
最初に、文部科学省と日本政策金融公庫の調査をもとに、幼稚園から大学までの学費をご紹介します。
なお、文部科学省の調査で公開されている学習費総額とは、学校教育費、学校給食費、学校外活動費の合計金額です。それぞれの内訳は以下の通りです。
- 学校教育費:入学金、授業料、教科書代など学校教育に直接必要な費用
- 学校給食費:学校で提供される昼食の材料費や調理費などの費用
- 学校外活動費:学習塾や習い事など学校外での教育に関する費用
幼稚園に通う子どもの教育費
幼稚園に通う子どもの学習費総額は、以下の通りです。
公立幼稚園 | 私立幼稚園 | |
年間平均額 | 165,126円 | 308,909円 |
3年間合計 | 472,746円 | 924,636円 |
※出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
私立幼稚園の学習費総額は、公立幼稚園の約1.9倍です。
学習費総額に占める割合は、公立・私立ともに「学校外活動費」がもっとも高く、公立は54.8%、私立は46.7%となっています。
小学校に通う子どもの教育費
続いて、小学校に通う子どもの学習費総額をみていきましょう。
公立小学校 | 私立小学校 | |
年間平均額 | 352,566円 | 1,666,949円 |
6年間合計 | 2,112,022円 | 9,999,660円 |
※出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
幼稚園と比較すると、公立・私立ともに学習費総額は増加しました。
私立の小学校は、公立の4.7倍の教育費がかかる計算です。6年間の合計金額は約1,000万円であり、公立小学校よりもはるかに高い費用がかかります。
学習費総額に占める割合は、公立では「学校外活動費」が70.2%ともっとも高いのに対し、私立は「学校教育費」であり、57.7%を占めています。
中学校に通う子どもの教育費
中学校に通う子どもの学習費総額は、以下の通りです。
公立中学校 | 私立中学校 | |
年間平均額 | 538,799円 | 1,436,353円 |
3年間合計 | 1,616,317円 | 4,303,805円 |
※出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
公立中学校の学習費総額は、公立小学校よりも高いですが、私立については低くなっています。
私立中学校の学習費総額は、公立の2.7倍です。小学校と比較すると公立と私立の差は縮まりましたが、それでも私立中学校の学費負担は重く、家計を圧迫する要因となります。
学習費総額に占める割合は、公立では「学校外活動費」が68.4%ともっとも高いのに対し、私立は「学校教育費」が73.9%を占めています。
高等学校(全日制)に通う子どもの教育費
高等学校(全日制)に通う子どもの学習費総額は、次の通りです。
公立高等学校 | 私立高等学校 | |
年間平均額 | 512,971円 | 1,054,444円 |
3年間合計 | 1,543,116円 | 3,156,401円 |
※出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
公立・私立ともに、中学校と比較して学習費総額は安くなっています。この主な要因は、学校給食費がかからなくなるためです。
私立高校の学習費総額は、公立高校の2.1倍です。
学習費総額に占める割合は、公立・私立ともに「学校教育費」がもっとも高く、公立で60.3%、私立で71.2%となっています。
大学に通う場合の子どもの教育費
日本政策金融公庫の調査では、大学に進学する場合の入学費用と在学費用の平均額が紹介されています。入学費用と在学費用に含まれる費用は、以下の通りです。
- 入学費用:入学金や入学時の学校納付金など入学に際してかかる一時的な費用
- 在学費用:授業料や教科書代、通学費、学習塾の月謝やおけいこ事の費用など
国公立大学と私立大学に通う場合に、4年間でかかる学費は以下の通りとなります。
国公立大学 | 私立大学文系 | 私立大学理系 | |
入学費用 | 67.2万円 | 81.8万円 | 88.8万円 |
在学費用(年間) | 103.5万円 | 152.0万円 | 183.2万円 |
4年間合計 | 481.2万円 | 689.8万円 | 821.6万円 |
※出典:日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」
調査結果をみると、私立大学理系が821.6万円ともっとも高額であり、私立大学文系が689.8万円、国公立大学が481.2万円と続きます。
大学の進学時にかかる費用は、高校までと比較して高額となっています。子どもが大学の進学を希望する可能性がある場合は、計画的に資金を準備しておくのが望ましいでしょう。
医学部や歯学部に進学する場合の教育費はさらに高額
両親が医師や歯科医師であると、子どもが同業を目指す割合が一般家庭よりも高い傾向にあります。
医学部や歯学部に進学をする場合、他の学部に進学する場合よりも、高額な教育費がかかる可能性があります。
医学部や歯学部に進学した場合にかかる学費
国公立大学の医学部や歯学部であれば、学費の負担は比較的低くなります。6年間かかった場合の学習費総額は約350万円です。
一方、私立の医学部や歯学部に通う場合、大学によって学費は異なりますが、基本的には国公立大学よりもはるかに高額です。
文部科学省の調査によると、私立大学の医学部・歯学部に入学する場合、初年度だけでも平均で約482万円の学費がかかるとされています。学部別にみると、医学部は約508万円、歯学部は約438万円です。
※出典:文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
6年間通ったときにかかる費用は、学校への寄附金なども加えると3,000万円を超える大学も多く、中には5,000万円近くかかるケースもあります。
国公立の医学部や歯学部に進学できれば、教育費の負担は比較的軽くなるかもしれません。
しかし、入学するためには非常に高い学力が求められるため、合格するのは容易ではありません。
子どもが医学部や歯学部を志しているのであれば、早い段階から計画的に教育資金を準備しておくことが大切です。
私立大学の医歯学部の学費が高い背景
私立大学の医学部の学費が高いのは、在学年数が6年と通常の学部よりも長いことが主な理由です。
また、国によって医学部の定員が絞られていることや、医療機器を使った実験などに多額の費用がかかることも、1人あたりの学費が高くなる要因と考えられます。
さらには、学費の一部が大学病院の経営に充てられていることも背景にあるようです。
大学病院では、最新の医療設備の導入や高額な薬剤の購入、さらには医師や看護師などの雇用などで、経営に多額の費用がかかります。
こうした大学病院の経営にかかる費用を医学部の学費で賄っていることが、学費高騰の一因となっています。
子どもの教育資金は計画的な準備を
子どもの教育資金は、住宅購入資金や老後資金とともに人生の三大資金といわれることもあるほど、一般的に高額です。
とくに、子どもが医学部や歯学部に進学する場合、多額の資金を準備しておかなければなりません。
子どもの教育資金を準備する方法としては、預貯金が一般的です。預貯金は、元本が保証されているため安全性が高く、いつでも引き出せるなどさまざまなメリットがあります。
しかし、昨今は低金利の環境が続いており、預貯金口座にお金を預けていても利息はあまり付かず、資産はさほど増えていきません。
また、物価が上昇すると相対的にお金の価値が下がり、保有資産が目減りすることもあるため、預貯金だけで教育資金を貯めるのはかえってリスクがあるとも考えられます。
そこで、預貯金だけでなく貯蓄型の生命保険の加入や、投資信託などへの積立投資などを併用するのも方法です。
複数の方法を組み合わせることで、資産が目減りするリスクを抑えつつ、運用益を得てより効率的に教育資金を蓄えられる可能性があります。
ただし、貯蓄型の生命保険や金融商品の積立投資には注意点もあるため、それらをよく理解し、家庭の状況に応じた方法で教育資金を準備することが大切です。