賃貸と持ち家はどちらが良い?-それぞれのメリットやコストを比較-
マンションやアパートなどの賃貸住宅に住むべきか、それともマイホームを購入するべきか悩む人は少なくありません。
賃貸と持ち家のどちらが良いとは一概にはいえないため、それぞれのメリットをよく理解したうえで、自分自身や家族にもっとも適した方を選ぶことが大切です。
今回は、賃貸住宅と持ち家のメリットや、それぞれに住み続けた場合にかかるコストをご紹介します。
賃貸の主なメリット
まずは、賃貸住宅のメリットをみていきましょう。主なメリットは、以下の4つと考えられます。
- 住み替えがしやすい
- メンテナンス費用や手間がかからない
- 多額の負債を負わずに済む
- 初期費用が比較的低い
1つずつ解説します。
1.住み替えがしやすい
賃貸住宅のもっとも大きなメリットは、ライフスタイルの変化に合わせて柔軟に住み替えができることです。
たとえば、独身時代は1Kや1LDKに住み、結婚して子どもができたら3LDKや4LDKのマンションに住み替えることで、家族構成やライフステージに合わせた住処を得られます。
一方、持ち家を所有している場合、住み替えをするためには買い手を探さなければなりません。買い手探しが難航すると、希望するタイミングで住み替えができないことがあります。
「子どもが成長して家が手狭になった」「転勤が決まった」などが生じたとき、スムーズに転居できるようにしておきたいのであれば、賃貸住宅の方が向いているといえます。
2.メンテナンス費用や手間がかからない
賃貸住宅の場合、建物や設備の管理責任はオーナーにあります。
たとえば、エアコンや給湯器、ガスコンロなどが故障したときに、修理・交換といった対応をするのは、基本的にオーナーまたは管理会社です。
また、建物の外壁や屋根、廊下などの修繕・メンテナンスも、オーナーや管理会社が担当するため、入居者が業者の手配や費用の支払いをする必要は基本的にありません。
戸建て住宅を購入した場合、外壁や屋根などは持ち主自身の費用負担で修繕をする必要があります。
マンションであれば、外壁や廊下などの共用部分は管理組合が修繕・メンテナンスをしますが、入居者は管理費や修繕積立金を毎月支払います。
その点、賃貸住宅は建物や設備の維持・管理・メンテナンスをするための費用や手間は、持ち家ほどかかりません。
賃貸住宅でも管理費の支払いは発生するものの、毎月の支払額は持ち家よりも低い傾向にあります。
3.多額の負債を負わずに済む
マイホームを購入する場合、住宅ローンを組むのが一般的です。
たとえば、6,000万円の住宅を購入する場合、頭金を500万円用意したとしても、5,500万円の住宅ローンを組むことになります。
東京都23区をはじめとした首都圏のマンションでは、価格が1億円を超えるケースもあり、多額の住宅ローンを組まなければ購入が難しい状況です。
賃貸住宅の場合、家賃の支払いはありますが、持ち家のように多額の負債を負うことはありません。多額の債務を抱えたくない人や、これ以上債務を増やしたくない人は、賃貸住宅の方が適している可能性があります。
4.初期費用が比較的低い
賃貸住宅に入居するときは、敷金や礼金、仲介手数料、前払い家賃などの初期費用がかかります。
一方、持ち家の場合は、登記費用や仲介手数料、住宅ローンの融資事務手数料、保証料など、購入する家の種類に応じたさまざまな諸費用がかかります。
また、購入価格の1〜2割程度の頭金を入れる人も少なくありません。
国土交通省の調査によると、初めて住宅を取得する人が支払った自己資金の額は、注文住宅が941万円、分譲集合住宅(マンション)が1,438万円でした。
※出典:国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査の結果:国土交通省」
これに対して、賃貸物件の初期費用は、家賃の1〜2か月分程度が一般的です。たとえば、家賃が20万円である賃貸マンションの場合、初期費用の目安は20万〜40万円です。
住宅の種類や規模にもよるため一概にはいえませんが、賃貸住宅であれば持ち家よりも比較的安い初期費用で住み始めることが可能です。
持ち家の主なメリット
持ち家の主なメリットは、以下の4つです。
- 自分自身の資産になる
- リフォームやリノベーションが比較的自由にできる
- 住宅ローン完済後は経済的負担が減る
- 団体信用生命保険に加入できる
1.自分自身の資産になる
持ち家のもっとも大きなメリットは、物件を所有できることです。住宅ローンを組んで取得した場合でも、完済したあとは住宅を自分自身の資産として保有することができます。
たとえば、8,000万円の新築マンションを35年の住宅ローンを組んで購入した場合、ローンの完済後は、築35年のマンションという資産が残ります。
セカンドライフの生活資金や、有料老人ホームの入居一時金などを準備したいときは、保有するマンションを売却して現金化するという選択ができます。
また、自分自身が住まなくなったときは、賃貸に出すことで収入を得ることも可能です。
賃貸住宅の場合、何年家賃を払おうとも、基本的に自分自身のものにはなりません。資産形成という点では、持ち家の方が優れているといえます。
2.リフォームやリノベーションが比較的自由にできる
持ち家は、自分自身の所有物であるため、リフォーム・リノベーションを自由に行いやすいといえます。
たとえば、子どもが独立したときに、室内の壁を取り壊してリビングをより広くすることが可能です。
年齢を重ねたことで足腰が弱ってきたのであれば、手すりの設置や段差の解消などのバリアフリー化も進めやすいでしょう。
分譲マンションを購入した場合、リフォームができるのは室内のみとなります。また、管理規約で定められる範囲内の工事しかできません。
とはいえ、賃貸マンションほどは工事の内容が制限されません。規約や建物の構造などによる制限の範囲内であれば、間取りの変更やキッチンを始めとした水回り設備の更新・移動などもできます。
自分自身や家族の希望、生活スタイルにあわせて、間取りの変更や設備の刷新などを行って住空間をカスタマイズしやすいのは、持ち家の大きなメリットです。
3.住宅ローン完済後は経済的負担が減る
住宅ローンの返済期間中は、借入元金の返済とあわせて利息を支払う必要があります。
しかし、ローンを完済したあとは毎月の返済額の分だけ支出が減るため、住居費用の負担が軽減され、家計に余裕が生まれる可能性があります。
とくに、現役をリタイアするまでに住宅ローンを完済できれば、主な収入源が年金となったあとも、住居費が家計を圧迫しにくくなります。
4.団体信用生命保険に加入できる
持ち家を購入する際に住宅ローンを組む場合、基本的には団体信用生命保険に加入します。
団体信用生命保険(以下、団信)は、借り主が亡くなったときや所定の高度障害状態になったとき、保険金で住宅ローンが完済される仕組みの保険です。
高額の住宅ローンを組んでマイホームを取得したとしても、団信に加入していれば万が一のときに残された家族が重い返済負担を負わずに済みます。
また、家が不要になった場合には、売却してまとまった現金に換えることもできます。
一方、賃貸住宅の場合は、一家の大黒柱に万が一のことがあったあとも、遺族は家賃を支払っていかなければなりません。
自分自身が亡くなった場合に、団信の保障により残された家族の住居費の負担を軽減できることも、持ち家の主なメリットといえます。
賃貸と持ち家のコストを比較
では、賃貸住宅と持ち家ではコストがどれほど異なるのでしょうか。モデルケースをもとに、シミュレーションで確認をしてみましょう。
シミュレーションの条件は、以下の通りです。
試算条件 | |
賃貸マンション | ・家賃+管理費:月額20万円 ・入居時の諸費用:100万円 ・更新料(2年ごと):20万円 |
分譲マンション | ・購入価格:7,500万円 ・住宅ローンの借入額:7,500万円 ・借入金利:初回〜0.4%、10年目〜0.7%、20年目〜1.0% ・返済期間:35年 ・購入時の諸費用:530万円 ・管理費+修繕積立金:月額3万円 ・固定資産税:年間30万円 |
今回のシミュレーションでは、上記の条件で40年間住み続けたときにかかる合計のコストを比較します。また、火災保険料や地震保険料、駐車場代、修繕費用などは考慮していません。
試算結果は、以下の通りです。
シミュレーション結果 | |
賃貸マンション | ・家賃+管理費:20万円×12か月×40年間=9,600万円 ・入居時の諸費用:100万円 ・更新料(2年ごと):20万円×20回=400万円 ・合計:9,600万円+100万円+400万円=1億100万円 |
分譲マンション | ・総返済額:8,334万円 ・購入時の諸費用:530万円 ・管理費+修繕積立金:3万円×12か月×40年間=1,440万円 ・固定資産税:30万円×40年間=1,200万円 ・合計:8,334万円+530万円+1,440万円+1,200万円=1億1,504万円 |
40年間住み続けたときのコストは、賃貸マンションが1億100万円であるのに対し、分譲マンションは1億1,504万円です。
そのため、分譲マンションに住むコストの方が1,404万円高い結果となりました。
ただし、分譲マンションに40年間住んだのであれば、住宅ローンをすでに完済しています。
その一方で、賃貸マンションは家賃がかかり続けるため、分譲マンションに住む期間が長ければ長いほど、コストの差は縮まっていくでしょう。
また、家賃が高い賃貸住宅に住み替えをしたときや、マイホームを買い替えたときなども想定すると、試算結果は異なったものとなります。
賃貸と持ち家のコストを試算して比較するためには専門的な知識が必要であるため、ファイナンシャルプランナーなどの専門家のサポートが不可欠といえます。
開業医が賃貸と持ち家を選ぶ際のポイント
賃貸住宅と持ち家には、それぞれに一長一短があります。そのため、自分自身や家族の希望、今後のライフプランなどをもとに慎重に住まいを選ぶことが大切です。
たとえば、クリニックを移転する予定がなく今後も同じエリアに住み続ける予定の人や、老後も暮らせる終の住処を探している人などは、持ち家の方が適しているといえます。
一方、将来的にクリニックの移転により引っ越しをする予定がある方や、多額の住宅ローンを組むことに抵抗がある方などは、賃貸住宅の方が向いているかもしれません。
賃貸と持ち家のどちらを選ぶかは、個人の事情や価値観などでも異なるので、一概にどちらが良いとはいえません。
賃貸と持ち家のどちらが良いか判断に迷うときは、ファイナンシャルプランナーをはじめとした専門家にも相談し、自分自身にあった選択を考えることが重要となります。