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公的介護保険とは?-給付内容や民間介護保険との違いを解説-

保険商品社会保障制度 2024-08-09

高齢化が進む日本社会において、介護は誰もが直面する可能性のある重要な問題です。介護の備えについて考えるうえでは「公的介護保険」の理解が欠かせません。

今回は、公的介護保険の目的と仕組み、給付内容などを解説します。

公的介護保険制度の目的と仕組み

公的介護保険(介護保険制度)は、市区町村が運営する社会保険制度です。介護が必要になった人を社会全体で支えるために、2000年にスタートしました。

高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう支援するとともに、介護にかかる家族の負担を軽減することが、公的介護保険の主な運営目的です。

40歳以上の国民は、原則として全員が公的介護保険の被保険者となって保険料を納めます。

公的介護保険は「現物支給」が原則の制度です。介護が必要になったとき、自治体から要介護認定を受けることで、介護サービスを1割〜3割の自己負担で利用することができます。

介護保険の被保険者(第1号被保険者、第2号被保険者)

介護保険の被保険者は、以下の2種類があります。

  • 第1号被保険者:65歳以上
  • 第2号被保険者:40歳から64歳まで

第1号被保険者は、寝たきりや認知証などで介護が必要となり、自治体から要介護状態と認定されたときに、訪問介護や訪問入浴などの介護サービスを利用できます。

一方、第2号被保険者が公的介護保険の介護サービスを利用できるのは、老化に起因する疾病(特定疾病)により要介護状態と認定されたときです。

特定疾病は、以下の16種類となります。

※出典:厚生労働省「介護保険制度について

介護保険のサービスを利用する手順

介護保険のサービスを利用するには、要介護または要支援の認定を受ける必要があります。要介護認定の流れは、以下の通りです。

1.市区町村の窓口で「要介護(要支援)認定」の申請をする

2.本人・家族への聞き取り調査や主治医が作成した意見書で介護が必要な度合いを判定

3.認定結果の通知

4.要介護1〜5と認定された倍は介護サービス計画(ケアプラン)、要支援1・2と認定されたときは介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)を作成

5.サービスの利用開始

原則として、被保険者本人またはその家族が申請手続きをしますが、地域包括支援センターに代行してもらうことも可能です。

認定結果は「非該当」「要支援1~2」「要介護1~5」のいずれかです。介護が必要な度合いは、要支援1がもっとも低く、要介護5がもっとも高くなります。

公的介護保険の給付内容

介護保険のサービスは「在宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類があります。ここでは、各介護サービスの例をご紹介します。

在宅サービス

在宅サービスは、要介護者が住み慣れた自宅で生活を続けられるよう支援するためのサービスです。サービスの例は、以下の通りです。

  • 訪問介護:ホームヘルパーによる身体介護や生活援助を受けられるサービス
  • 訪問入浴介護:浴槽を積んだ巡回者の訪問よる入浴の介助を受けられるサービス
  • 訪問看護:看護師や保健師による療養上の世話や診療の補助を受けられるサービス
  • 通所介護(デイサービス):日帰りでの入浴、食事、機能訓練などを受けられるサービス
  • 福祉用具の貸与:車椅子や特殊寝台などを支給限度額の範囲内でレンタルできる
  • 特定福祉用具購入費・住宅改修:限度額の範囲内で福祉用具の購入費や住宅改修費が支給される

福祉用具の購入費用は年間10万円、手すりの取り付けや段差の解消などの住宅改修費は20万円を限度に支給されます。

施設サービス

施設サービスは、施設に入所して日常的な介護や機能訓練などを受けるサービスです。主な施設は、以下の3種類です。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):常時介護が必要で在宅では介護が困難な人を対象とした施設
  • 介護老人保健施設:病状が安定しており在宅復帰を目指す人を対象とした施設
  • 介護医療院:慢性疾患などで長期の療養が必要な方が医療や介護などを受ける施設

上記のうち、特別養護老人ホームは原則として要介護3以上の方が対象となります。

また、要支援1または2に認定された人は原則として施設サービスを利用できません。

地域密着型サービス

地域密着型サービスは、要介護者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう、市区町村が主体となって提供するサービスです。以下のようなサービスがあります。

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:日中・夜間を通じた定期訪問と随時の介護・看護を受けられるサービス
  • 小規模多機能型居宅介護:身近にある小規模な施設への通所を中心に、定期的な泊まりや自宅への訪問も組み合わせたサービス
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):認知症のために介護を必要とする人が共同生活を送りながら介護や機能訓練を受けられる施設

公的介護保険の自己負担割合と支給限度額

公的介護保険の介護サービスを利用する場合、利用者が負担するのは原則として費用の1割です。一定以上の所得がある人は、2割または3割負担となります。

在宅サービスを利用する場合は、介護が必要な度合いによって、利用できるサービスの量(支給限度額)が異なります。支給限度額は、以下の通りです。

要介護度1か月あたりの支給限度額
要支援150,320円
要支援2105,310円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

※上記は1単位につき10円としたときの給付限度額です。地域によっては上記とは支給限度額が異なることがあります

介護が必要な度合いが重くなればなるほど、支給限度額は高くなっていき、より多くの介護サービスを受けることができます。

上記の支給限度額の範囲内で、公的介護保険の介護サービスを利用した場合、自己負担は1〜3割です。

支給限度額を超える介護サービスを利用すると、超過した部分は全額自己負担となります。

ひと月あたりの利用者負担額の合計が、所得に応じて区分された上限額を超えた場合「高額介護サービス費」を申請することで、超過した分が介護保険から払い戻されます。

高額介護サービス費による払い戻しを受けるときは、市区町村への申請が必要です。

公的介護保険の保険料

公的介護保険の被保険者は、原則として介護保険料を納めます。ここでは、第1号被保険者と第2号被保険者が納める介護保険料をご紹介します。

第1号被保険者の保険料

第1号被保険者の保険料は、条例により定められる基準額に所得の段階に応じた割合をかけて算出されます。基準額は、市区町村が3年に1回の頻度で定めます。

2024年度からの基準額は、全国平均で月額6,225円です.

 ただし、市区町村によって異なっており、3,374~9,249円と差があります。

基準額に乗じる割合は、0.285〜2.4までの13段階であり、合計所得金額や世帯の住民税の課税状況などで判定されます。

第1被保険者の介護保険料の納め方は、以下の通りです。

  • 公的年金の受給額が年間18万円以上:年金からの天引き(特別徴収)
  • 上記以外:市区町村からの納入通知書や口座振替により納付(普通徴収)

第2号被保険者の保険料

第2号被保険者が会社員や公務員である場合、介護保険料は健康保険料とあわせて納めます。保険料は、月給や賞与に所定の保険料率をかけて算出されます。

また、保険者と事業主(勤務先)で1/2ずつ保険料を負担するのが原則です。

自営業やフリーランスなどの介護保険料は、国民健康保険の保険料と一緒に徴収されます。

市区町村の国民健康保険に加入している場合、介護保険料は加入者の所得や資産、家族の人数などに応じて決まります。

医師国保などの国民健康保険組合に加入している人は、規約で決められた介護保険料を支払います。

民間介護保険の役割

40歳以上の人は、公的介護保険に加入することで、所定の介護が必要な状態になったとき、一定の自己負担で介護サービスを利用できます。

しかし、介護サービスを利用するためには1〜3割の自己負担分を支払う必要があり、支給限度額を超えた部分は全額自己負担となります。

そこで検討したいのが「民間介護保険」です。民間介護保険は、公的介護保険を補完するために、生命保険会社が取り扱う任意加入の保険商品です。

民間介護保険に加入すると、保険会社の定める要件に該当したときに、年金または一時金で給付金が現金で支払われます。

公的介護保険の自己負担分を民間介護保険の給付金で賄うことで、経済的な負担を軽減することができます。

また、介護が必要な状態になったことによる収入の減少をカバーすることも可能です。

寝たきりや認知症などで介護が必要になったとき、より充実した環境で介護を受けながら余生を過ごしたい場合は、民間介護保険に加入して備えておくのも1つの方法です。


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