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火災保険とは?-基本的な補償内容や近年の動向-

保険商品 2024-09-20

火災保険は、補償対象である建物や設備、医療機器などに生じた損害を補償する保険です。

クリニックを安定的に経営していくためには、火災保険に加入して火災や自然災害などのリスクに適切に備えることが重要です。

今回は、火災保険の基本的な仕組みや補償内容、近年の動向などを解説します。

火災保険の基礎知識

火災保険に加入すると、建物や家具、家電、衣服などが火災や自然災害などで損害を負ったときに、損害額に応じた保険金が支払われます。

クリニックの経営においても、医療機器や内装などの損害に備えるために事業用火災保険に加入するのが一般的です。

ここでは、火災保険の補償範囲や保険金の支払額の決まり方などの基本的な商品内容を解説します。

火災保険の補償範囲

火災保険の主な補償範囲は、以下の通りです。

  • 火災・破裂・爆発
  • 落雷
  • 風災(台風や竜巻など)・雹(ひょう)災・雪災(豪雪・雪崩など)
  • 水災(台風や豪雨などによる洪水・土砂崩れ・高潮など)
  • 水濡れ(上階からの水漏れなど)
  • 盗難
  • 破損・汚損、外部からの物体の落下・飛来・衝突

火災だけでなく、落雷や洪水、盗難による被害も補償範囲に含めることが可能です。

火災保険に加入する際は、補償範囲を選択します。補償範囲が広いほど、損害に幅広く備えられますが、保険料は高くなります。

事業用火災保険の補償対象

戸建て住宅やマンションに入居する人が加入する火災保険の場合、補償対象は建物や家財(家具・家電・衣服など)です。

一方、開業医が加入する事業用火災保険の主な補償対象は、以下の通りとなります。

  • 建物
  • 内装
  • 設備・什器・機器
  • 器具・薬品 など

火災保険に加入するときは、クリニックにある機器や設備などを適切に補償対象に含めることが重要です。

なお、医療機器をリースにする場合、基本的にはリース会社が加入する動産総合保険で損害が補償されます。そのため、医師が加入する火災保険の補償対象に含めなくて良いケースがほとんどです。

保険金の支払方式

火災保険は、補償対象が実際に負った損害に応じた保険金が支払われます。

具体的には「施設に損害が生じた時点での建物の評価額(保険価額)」や「財産などの動産で生じた実損額」を限度に、保険金が支払われる仕組みです。

また、保険金の支払方式には「実損填補方式(全部保険)」と「比例填補方式(一部保険)」があります。

実損填補方式は、あらかじめ決めた保険金額を上限として実際の損害額が支払われるものです。比例填補方式は、保険金額が保険の対象物の評価よりも低く設定されるときの支払方式です。

たとえば、評価額が1,000万円の医療機器に対して、保険金額を500万円に設定していたとしましょう。この場合、医療機器に対して50%の保険をかけている状態です。

もし、補償対象の医療機器に500万円の損害が生じた場合、支払われる保険金は損害額の50%である250万円となります。

一方で、保険の対象物の評価額を超える保険金額にすることを「超過保険」といいます。

超過保険の場合、評価額を超える部分は保険金の支払対象になりません。そのため、超えた部分の保険料はムダになってしまいます。

火災保険に加入する際は、保険金額を適切に設定することが大切です。

近年の火災保険の動向

近年は、日本各地に大きな被害をもたらす自然災害が頻発しており、その影響で火災保険料は上昇傾向にあります。また、最長契約期間は5年間に短縮されました。

火災保険料は上昇傾向にある

2010年以降の日本では、台風や豪雨などの災害が相次いでいるため、保険会社は保険金の支払いが増加し、収支が悪化している状況です。

たとえば、2018年には西日本豪雨、2019年には台風15号・19号が発生したことで、保険会社の保険金支払額が急増しました。

また、新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ情勢などの影響により、資材価格や人件費が上昇して修理コストが増加したことも、損害保険会社の経営状況を圧迫する要因となっています。

こうした事態を受けて損害保険料率算出機構は、各保険会社が火災保険料を算出する際に目安とする「参考純率」を、2023年6月に全国平均で約13%引き上げました。

これにより、2024年10月からは各損害保険会社の火災保険料も値上げされる予定です。

保険期間は最長5年に短縮

火災保険の保険期間は、これまで最長10年間でした。しかし、2022年10月以降に新規契約や契約を更新する火災保険については、契約期間が最長5年に短縮されています。

実は、2015年9月以前は、火災保険の契約期間は最長36年でしたが、自然災害による保険金支払額の増加などの影響により、同年10月から最長10年に短縮されたばかりでした。

火災保険は、契約期間が終わるまで契約者が支払う保険料は変わりません。また、契約期間が長ければ長いほど割引率が大きくなり、保険料は割安になる仕組みです。

火災保険の最長契約期間が、36年、10年、5年と短縮化されていることで、契約者の保険料負担は増加しているといえます。

地震や津波による損害は火災保険の補償対象外

火災保険は、火災や自然災害など幅広い原因による損害を補償しますが、その一方で、地震や噴火、これらによる津波は補償対象外です。

たとえば、地震によって発生した火災で建物や医療機器が焼失したり、津波で機材が流されたりしても、火災保険から保険金は支払われません。

地震や津波による損害に備えるためには「地震保険」に加入する必要があります。事業用火災保険の場合は「地震危険補償(特約)を付けることで、地震や津波による損害に備えることが可能です。

地震危険補償特約であれば、建物や設備、機器、什器、備品など補償対象に指定しているものが地震や津波などで損害を負うと、保険金が支払われます。

また、震災でクリニックや医療機器などが被害を受けて診療ができなくなり、その結果得られなくなった利益(逸失利益)を補償する商品もあります。

日本は世界有数の地震大国であり、いつ大きな地震が起きてもおかしくありません。

今後30年以内には、マグニチュード8〜9ほどの地震である「南海トラフ地震」が70〜80%の確率で発生するともいわれています。

大地震により、クリニックの内装や医療機器などが被害に遭ったとしてもすぐに立て直せるよう、地震保険に加入して備えておくのも1つの方法です。


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