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所得補償保険とは?-共済や就業不能保険との違いを解説-

リスクコンサルティング保険商品 2024-11-08

開業医は、病気やケガで働けなくなり、収入が途絶えてしまった場合でも、クリニックの固定費や生活費などを支払っていかなければなりません。

そこで加入を検討したいのが、所得補償保険や所得補償共済です。

今回は、所得補償保険の基本的な補償内容や所得補償共済、就業不能保険、収入保障保険との違い、選ぶ際のポイントを解説します。

所得補償保険とは

所得補償保険とは、病気やケガで働けなくなったときの収入減少や所得の喪失を補償する保険のことです。

所得補償保険に加入すると、病気やケガにより入院や医師の指示による在宅療養などで仕事を休まざるを得なくなったときに、保険金が支払われます。

所得補償保険を取り扱うのは、損害保険会社です。保険期間(補償を受けられる期間)は、基本的に1〜2年程度と短期であり、契約が満了すると一定の年齢まで自動更新されていくのが一般的です。

保険金の支払いは、保険会社が定める就業不能の状態になってから一定の免責期間を経過したあとに始まります。免責期間は、7日程度です。

保険金の受取額は、契約を結ぶ前の12か月における、ひと月あたりの平均所得額の範囲内で設定します。平均所得額に保険会社が定める割合(例:50%、70%)を上限として、受取額を設定できます。

働けなくなる前の平均月収を上回る保険金額を設定することは基本的にできません。

就業不能保険や収入保障保険の違い

所得補償保険と名称が似た保険商品に、就業不能保険と収入保障保険があります。それぞれの主な特徴は、以下の通りです。

            所得補償保険         就業不能保険          収入保障保険     
  取扱保険会社   損害保険会社   生命保険会社
 補償(保障)内容   短期的な就業不能状態 長期的な就業不能状態   死亡・高度障害状態  
   保険期間 1年などの一定期間 「60歳まで」など一定の
年齢・期間までを保障
   免責期間  7日程度と短期 60日、180日など長期     なし
 保険金の受取人   被保険者    被保険者 契約時に指定した保険金受取人 (遺族が一般的)

ここではそれぞれの特徴と、所得補償保険との違いを見ていきましょう。

就業不能保険

就業不能保険は、所得補償保険と同様に病気やケガで長期間の入院や自宅療養が必要となり、収入が途絶えてしまった場合に備える保険です。

所得補償保険を取り扱うのは損害保険会社であるのに対し、就業不能保険は生命保険会社で加入できる点が異なります。

免責期間は、所得補償保険が7日程度と短く、病気やケガで働けなくなってから比較的短期間で保険金の支払いが始まります。

それに対して就業不能保険の免責期間は、60日や180日と長期です。そのため、所得補償保険と比較して保険金を受け取り始めるタイミングは遅いといえます。

一方、保険期間については、所得補償保険は1年ほどと短期ですが、就業不能保険は「65歳まで」「20年など」の長期に設定することが可能です。

よって、所得補償保険が短期的な収入減少をカバーするのに対し、就業不能保険は長期的な収入減少に備えられる保険である点が大きな違いとなります。

収入保障保険

収入保障保険は、被保険者(保険の対象となる人)が死亡または所定の高度障害状態になった場合に保険金が支払われる商品です。就業不能保険と同様、生命保険会社が取り扱いをしています。

収入保障保険に加入したあと、被保険者に万が一のことがあったときは、毎月一定額の保険金が契約時に定められた期間の満了まで支払われます。

保険金は基本的に分割で支払われますが、保険会社や商品によっては一括受取、あるいはその両方を選択することも可能です。

所得補償保険は、被保険者が生存しているあいだの収入減少に備えるのに対し、収入保障保険は被保険者が亡くなったあとの家族の生活費や教育費などをカバーする点が異なります。

また、保険金受取人は、所得補償保険が被保険者本人であるのに対し、収入保障保険では被保険者の家族が受取人となります。

保険期間については、所得補償保険の1年程度と短期で更新ができるのに対し、収入保障保険は「55歳まで」や「30年間」と長期である代わりに更新はできません。

所得補償保険と所得補償共済の違い

所得補償保険は、損害保険会社と直接契約を結ぶ他にも、特定の団体を通じて加入することも可能です。

特定の団体に所得する構成員・組合員向けができる所得補償保険は「所得補償共済」などと呼ばれることもあります。※団体によって名称が異なることがあります。

以降では、損害保険会社と直接契約するものを所得補償保険、特定の団体を通じて加入するものを所得補償共済として解説をします。

所得補償保険と所得補償共済は、どちらも病気やケガで働けなくなったときの収入減少に備えるものですが、いくつか異なる点があります。

所得補償保険であれば、保険会社の定める要件に該当する人は誰でも申し込めますが、所得補償共済はそれを実施している団体の構成員や組合員しか申し込めません。

また、所得補償保険を始めとした保険は営利目的の事業であるのに対し、共済は組合員同士の相互扶助を目的とした非営利の事業であるため、掛金が割安です。

団体割引が適用されることも多いため、所得補償共済は手ごろな掛金で働けなくなったときの収入減少に備えることができます。

なお、ひと口に所得補償共済といっても、補償額の上限や支払要件などは団体によって異なります。所得補償共済を検討する際は、制度内容をよく確認することが大切です。

開業医が所得補償保険・共済を選ぶ際のポイント

所得補償保険や所得補償共済を選ぶ際は、とくに下記の点を確認・比較すると良いでしょう。

  • 補償額
  • 支払要件
  • てん補期間

検討時に確認すべきポイントを1つずつみていきましょう。

補償額

開業医が、病気やケガで働けなくなったときの収入減少に備えるときは、固定費や生活費をカバーできるだけの補償額に設定することが大切です。

病気やケガで診療ができなくなり、収益が得られなくなったとしても、借入金の返済金や医療機器のリース代、水道光熱費、従業員の給与などは支払っていかなければなりません。

また、クリニックの固定費とあわせて、医師自身やその家族の生活費もカバーされている必要があります。

所得補償保険のほとんどは、平均所得をベースに補償額を決めるため、自分自身や家族の生活費はカバーできても、クリニックの固定費まではカバーできないかもしれません。

その点、所得補償共済であれば、年商を12分割した金額をベースに補償額を設定できる団体もあり、 生活費だけでなく固定費の支払いにも備えることができます。

開業医の方が働けなくなったときの備えを検討する際は、すでに所属している団体、あるいは加入できる団体が取り扱う所得補償共済の内容を確認すると良いでしょう。

支払要件

所得補償保険の支払要件となる就業不能状態とは「病気やケガの治療のために入院している」「医師の指示に基づき自宅療養している」などです。

民間の損害保険会社が取り扱う所得補償保険は、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患は基本的に補償の対象になりません。

一方、所得補償共済であれば、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患が補償の対象となる場合があります。

所得補償保険・共済への加入を検討するときは、保険金や共済金が支払われる要件をよく確認しておきましょう。

てん補期間

てん補期間とは、簡単にいえば保険金・共済金を受け取れる期間のことです。具体的には、免責期間が終了した日の翌日から保険金・共済金の支払いが終わるまでの期間を指します。

所得補償保険・共済のてん補期間は、通常1〜2年程度ですが、共済であればそれを上回る長期に設定できる場合もあります。

働けない期間が長引いてしまったとしても、固定費や生活費などの支払いが困難になる事態を避けたいのであれば、てん補期間が長い所得補償共済に加入するのも1つの方法です。

また、所得補償共済の場合、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患が補償の対象にはなるものの、てん補期間が1年に制限されることがあります。

所得補償保険や所得補償共済の加入を検討する際は、備えたい期間を考えたうえで、てん補期間にも着目して選ぶと良いでしょう。

今回は、所得補償保険の基本的な補償内容や他の保険・共済との違い、加入時に確認すべきポイントを解説しました。

開業医の方は、病気やケガで診療ができなくなったときも、固定費や生活費の支払いが滞ることのないよう、所得補償保険・共済に加入して備えておくことが望ましいといえます。


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