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障害年金とは?-受給額の計算方法や要件、請求の流れを解説-

社会保障制度 2024-12-25

「障害年金」は、公的年金に加入する人が突然の事故や病気などで一定の障害が残ったときに、生活を支えてくれる制度です。

老後に受け取れる「老齢年金」や、万が一のことがあったとき残された家族に支給される「遺族年金」と並ぶ公的年金の重要な給付です。

この記事では、障害年金の仕組みや申請方法、受給額の決まり方などを解説します。

障害年金は公的年金の給付の1種

障害年金は、病気やケガにより日常生活が制限されたときや思うように働けなくなったときに、一定の要件を満たすと受給できる年金です。

老齢年金や遺族年金と同じく公的年金の給付の一種ですが、現役世代も要件を満たせば受給できるという点が異なります。

押さえておきたい公的年金制度の基本

日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金の2階建ての構造です。原則としてすべての国民が国民年金に加入し、会社員や公務員などは厚生年金にも加入します。

国民年金に加入している人は一定の障害認定を受けると「障害基礎年金」を受給できます。

厚生年金に加入する人は、要件を満たすことで「障害厚生年金」や「障害手当金(一時金)」を受給することも可能です。

障害年金の対象となる病気やケガ

障害年金の対象となるのは、手足や眼、聴覚などに負った外部障害です。また、うつ病や統合失調症、発達障害などの精神障害も対象となります。

他にも、呼吸器疾患、心疾患、腎疾患など、一見すると”障害”という言葉からイメージしにくい病気も内部障害として障害年金の対象になり得ます。

障害等級の種類

障害年金を受給できるのは、障害等級に認定されたときです。障害等級は、日常生活や就労の制限の度合いに応じて、重度のものから1級、2級、3級の順に区分されています。

1級は、他人の介助がなければ日常生活のほとんどが送れないような状態です。身の回りのことがかろうじてできるものの、それ以外のことは難しく、入院や在宅での介護が必要な程度の障害が該当します。

2級は、必ずしも他人の助けは必要としないが、日常生活を送ることが困難な状態です。身の回りのことはある程度自分でできるものの、就労は困難であり、自宅や入院先での生活が基本となる程度の障害が該当します。

3級は、日常生活に支障はないが、就労が制限を受ける状態です。障害によって仕事の幅が限られたり、勤務時間の短縮が必要になったりする程度の障害が該当します。

障害年金の種類

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の主に2種類があります。それぞれの受給額の決まり方をみていきましょう。

障害基礎年金

障害基礎年金は、国民年金に加入している人が障害等級1級または2級となったときに受給できる年金です。

支給額は、障害等級に応じて定められています。生年月日が1956年4月2日以降である方の年金受給額は下記の通りです。(2024年4月分)

                 年金額
   1級            1,020,000円+子の加算額
   2級            816,000円+子の加算額

障害認定を受けた人に生計を維持されている子どもがいる場合は、子の加算額が適用されて受給額が増えます。子の加算額は以下の通りです。

  • 2人まで:1人につき234,800円
  • 3人目以降:1人につき78,300円

※2024年4月分

加算の対象となる子どもは「18歳になった後の最初の3月31日までの子」または「20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子」です。

障害厚生年金 

障害厚生年金は、会社員や公務員など厚生年金に加入している人が障害等級1〜3級のいずれかに認定されたときに支給される年金です。

障害厚生年金の支給額は、以下の通りです。

                    年金額
 1級       報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額234,800円
 2級       報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額234,800円
 3級       報酬比例の年金額

報酬比例の年金額は、主に厚生年金の加入期間とそのあいだに受け取った報酬の平均額をもとに決まります。計算式は、以下の通りです。

  厚生年金に加入していた期間            計算式
  2003年(平成15年)4月以降   平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数
  2003年(平成15年)3月まで   平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数

平均標準報酬額は2003年4月以降に受け取った給与・賞与の平均額、平均標準報酬月額は2003年3月までの給与や手当の平均額です。平均標準報酬額の計算に賞与は含まれません。

加入月数は、厚生年金に加入していた期間を指しますが、300か月(25年)未満の場合は300ヵ月とみなして計算します。

障害等級1級または2級と認定された場合、生計を維持している65歳未満の配偶者がいると

「配偶者の加給年金額」が支給されます。また、障害厚生年金に加えて障害基礎年金を受給することも可能です。

障害年金の受給要件

障害年金を受給するためには、下記の要件にすべて該当する必要があります。

                  要件の詳細
  初診日要件    障害の原因となった病気やケガで初めて医療機関を受診した日に公的年金制度に加入していたこと
 保険料納付要件       初診日の前日において、初診日がある月の2か月前までの被保険者期間で以下の合計が3分の2以上あること   ・国民年金の保険料を納付した期間 ※厚生年金の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む ・保険料の納付が免除されていた期間
 障害状態要件 障害認定日に下記の障害等級に認定される場合   ・障害基礎年金:障害等級1級または2級 ・障害厚生年金:障害等級1〜3級のいずれか

初診日に加入していたのが国民年金であれば障害基礎年金、厚生年金の場合は障害厚生年金の対象となります。厚生年金に加入している人は、国民年金の第2号被保険者でもあるため、要件を満たせば障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受給できます。

また、初診日が20歳前である場合や、60歳以上65歳未満で国民年金に加入していない場合も障害基礎年金の受給が可能です。

障害認定日は、以下のいずれかです。

  • その障害の原因となった病気やケガについての初診日から1年6か月
  • 1年6か月以内にその病気やケガが治った日または症状が固定した日

厚生年金の加入者は障害手当金を受給できることも

障害手当金は、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときに支給される一時金です。支給額は「報酬比例額の年金額×2」で計算されます。

障害手当金を受け取るための条件は、以下の通りです。

                  要件の詳細
 初診日要件      厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やケガ の初診日がある
 保険料納付要件初診日の前日において、初診日がある月の2か月前までの被保険者期間で以下の合計が3分の2以上あること   ・国民年金の保険料を納付した期間 ※厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む ・保険料の納付が免除されていた期間
 障害状態要件障害の状態が、次の条件すべてに該当していること。 ・初診日から5年以内に治っていること(症状が固定) ・治った日に障害厚生年金を受け取ることができる状態よりも軽いこと ・障害等級表に定める障害の状態であること

障害年金を請求する流れと必要書類

障害年金を受け取るためには書類をそろえて請求する必要があります。ここでは、障害年金の請求手続きの流れと、必要書類の例を解説します。

障害年金を請求する手順 

障害年金の請求手続きは、次のような流れで進めていきます。

 1.初診日を確認し年金事務所や市区町村役場に相談する

 2.請求書を作成し添付書類とあわせて年金事務所や市区町村役場に提出する

 3.日本年金機構から、年金証書や年金決定通知書などが届く

 4.年金が振り込まれる

まず、障害の原因となった病気やケガで初めて医療機関を受診した日(初診日)を確認します。また、初診日時点での公的年金の加入状況と保険料の納付状況、必要書類(診断書)なども確認しましょう。

続いて、年金請求書に必要事項を記入し提出します。提出先は、年金事務所や街角の年金相談センターです。障害基礎年金のみを申請する場合は、市区町村役場に請求書を提出することも可能です。

年金請求書を提出すると、障害年金の受給要件を満たしているか確認するための審査が行われます。審査にかかる期間は、3か月ほどです。

審査の結果、障害年金の支給が決定されると「年金証書」「年金決定通知書」などが届き、その1~2か月あとに年金が振り込まれます。

障害年金を受け取れないときは、日本年金機構から「不支給決定通知書」が送付されます。

請求時の必要書類

障害年金の請求時に必要となる主な書類は、次の通りです。

  • 年金請求書
  • 基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにできる書類
  • 戸籍謄本や戸籍抄本など本人の生年月日を確認できる書類
  • 所定の様式で作成された医師の診断書 など

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